はじめに

網膜の一番視力のところを黄斑部と言います。ここが年齢とともに傷んでくると視力低下、ゆがんでみる、色合いが判らなくなる、中心部が暗くなるなどの症状が出てきます。

このような状態を加齢黄斑変性と言います。今まで欧米人に多いと言われていましたが、日本人も食生活の欧米化及び高齢化社会になり増えてきており、現在視覚障害者の第4位となっております。ただ完全な失明になることは少なく、多くは中心視力視野の低下で周辺視野は維持される場合が多いです。ただ見ようとするところが障害されるため生活にはかなり支障がでます。(社会的失明)

© Japanese Ophthalmological Society

加齢黄斑変性のタイプ

萎縮型

黄斑部の組織が加齢とともに萎縮してくるタイプです。詳しい原因は分かっておりませんが、比較的ゆっくりとした進行で中心部に変化が及ばなければ高度な視力障害には至りません。ただ今のところこれといった治療法はありません。まれに滲出型に移行しますので、定期的な観察が必要です。

滲出型

健康な目では存在しない異常な血管(新生血管)が黄斑部の網膜下の組織(脈絡膜)から発生し網膜に伸びてくるタイプです。新生血管の発生にはVEGF(血管内皮細胞増殖因子)という物質が大きく関与しているのが近年わかりました。新生血管から出血を起こしたり、水分が漏れ出てきて黄斑網膜が腫れてきたりして、急速に網膜が障害されて視力が低下してきます。日本人に多いのもこちらのタイプです。主に黄斑変性といわれるのはこちらのタイプです。

検査

歪みの検査(アムスラーチャート)

視力低下するだけでなく歪みを自覚します。両眼では気づきにくいので時々片眼を隠して見え方をチェックするのが良いでしょう。病院で検査に使うのと同じような検査が下記サイトで簡便にできます。
http://www.kareiouhan.com/selfcheck/index.html

眼底検査・眼底写真

黄斑部の状態を、スリットを用いて詳しく検査をします。

蛍光眼底造影

正確な診断のために2種類の造影剤(フルオレセイン・インドシアニングリーン)を用いて検査をします。新生血管がどこにあるか、新生血管からの浸出液の漏れの状況が判ります。ただ安全上の問題(ショック等のリスク)もあり大病院等でお願いする場合が大半です。

網膜断層検査(OCT)

網膜の断層を詳しく診ることが出来るようになり、どこに網膜剥離がありどこに新生血管があるか詳細にわかるようになりました。

OCTアンギオ

最近のOCT技術の進歩で造影剤を使わずに網膜血管や新生血管の状態が詳細に判るようになりました。時に蛍光眼底検査より細かく判る場合があります。当院に最近導入したOCTはこのOCTアンギオを搭載しております。

治療

抗VEGF療法

近年主流になった治療法です。加齢黄斑変性では脈絡膜新生血管の成長を活性化させるVEGFという物質が眼内で沢山出来ています。VEGF阻害剤を眼内に注射(硝子体内注射)することによってVEGF活性を抑える治療法です。VEGF阻害剤の効果は眼内で1~2ヶ月とされているので、多くの症例で定期的に硝子体注射を繰り返す必要があります。ペガプタニブ(マクジェン)・ラニビブマブ(ルセンティス)・アフリベルセプト(アイリーア)の3種類が日本で許可されています。加齢黄斑変性には現在この治療が第一選択の治療となっています。ただ視力をもとに戻す治療ではなく視力維持を目標とした治療です。

光線力学療法(PDT)

抗VEGF療法が出てくるまで主流だった治療法です。光に反応しやすい物質を腕の静脈に注射して、その物質が黄斑部の新生血管に達したころ(15分後)に特殊なレーザーを当てて物質に化学反応を起こさせて新生血管を閉塞させます。物質が増殖性の高い新生血管に良く取り込まれるということを利用した治療です。黄斑変性のタイプによってこちらのほうが良い場合があります。

レーザー光凝固

新生血管が黄斑外の場合レーザーで焼きつぶしてしまうことが出来ます。しかし焼きつぶしたところは絶対暗点となりますのであまりに中心付近はかえって視力低下を起こします。

手術

硝子体手術で脈絡膜新生血管を抜去したり、黄斑部を移動したりするような手術がありましたが、抗VEGF療法行われるようになってほとんど行われなくなりました。将来iPS細胞を使った治療が普及してくるとまた行われる可能性はあります。

手術台

予防

禁煙

喫煙は黄斑変性と関連があることがよく分っています。加齢黄斑変性およびその前段階の人は禁煙をしましょう。

サプリメント

米国の大規模スタディ(AREDS2)でルテイン、ゼアキサンチン、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛、銅などを含んだサプリメントが黄斑変性の発症抑制に有効だと分かりました。加齢黄斑変性の前駆段階や片眼が加齢黄斑変性の方には推奨されます。
現在ボシュロム社のプレザービジョン2、参天製薬のサンテルタックスがAREDS2に準じて作成されています。

食事

緑黄色野菜はサプリメント同様黄斑変性症の発症を抑えると考えられます。肉類より魚中心の食事のほうが良いようです。

日光

紫外線・ブルーライトが網膜に障害を及ぼすことは実験上判っていますが、実際加齢黄斑変性にどこまで影響しているかは不明ですが、過度の日光暴露は避けた方が良いでしょう。ただブルーライトは体内時計にも大切な役割を果たしているのでブルーライトに過敏になるのも良くはありません。

参考
日本眼科学会 加齢黄斑変性
http://www.nichigan.or.jp/public/disease/momaku_karei.jsp

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